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判例(実務)と学説の思考方法の相違

井田先生は、『講義刑法学・総論』(初版 2008年 有斐閣)の中で次のように述べられており、

「学説が、因果関係が問題となるすべてのケースを説明できるような一般理論を求めているのに対し、判例は、明確な理論的立場の表明を避けており、とりわけ、最近の最高裁は、具体的な事例ごとに射程の狭い理由づけを行い、判断の集積を通じてその基本的考え方を次第に明確にしていく態度をとっている。」

この文章とリンクする形で、注)でこのようにも述べられている。

「ここには、因果関係の問題に限らず、刑法総論のあらゆる論点との関係でもみられる、判例(実務)と学説の思考方法の相違が現れている。学説が、生じうるあらゆるケースを解決できる理論の構築を目ざすのに対して、判例はあくまでも具体的ケースの妥当な解決を重視する。判例は、1個の学説のように読まれてはならず、そのつどの具体的な事実との関係で理解されなければならない。」

なるほど、その通りだと思う。刑法総論の勉強を進めれば進めるほど、この視点が非常に重要であることを実感する。

生じうるあらゆるケースを妥当な解決へと導くことのできる理論の構築が、刑法学研究の醍醐味というワケか。

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